2015年11月30日

『失語の症候学』 石和共立病院 鈴木千裕先生のこの一冊

『失語の症候学』
相馬 芳明、田邉 敬貴 著 医学書院 4,300円+税aphasia.jpg
 私の推薦図書は「失語の症候学」です。この本は私の学生時代に講義の1コマで使われたものです。失語の症候学から始まり、失語型診断の解説が詳しく記載されています。「発話はあるか→アナルトリーがあるか→錯語があるか→復唱ができるか→発話特徴→タイプ分類」というようにまとめられています。付録にはCD-ROMが付いており、録音されている発話が教科書に記載されているため分かりやすく、発話特徴の項目を参考に整理をしています。13症例分の自由会話、命名、復唱が録音されているので失語症の患者様を担当した際に、まとめをする時や症状が曖昧で迷った際はCDを聞いて参考にしています。
 私は今年度、回復期病棟に配属され、失語症の患者様と長期間関わる機会が増えました。初回時に考え方の過程を踏んで症状を判断し、分析する時に参考にしています。どの失語症の患者様にも当てはめて考えることができ、項目ごとに評価ができるようになってきたと思います。これからもこの本を基礎にして勉強していきたいと思います。
 皆様も判断に迷った際、是非手に取ってみて下さい。
posted by st_yamanashi at 18:44| Comment(0) | 書籍(臨床) | 更新情報をチェックする

2015年09月27日

『ペコロスの母に会いに行く』 一宮温泉病院 倉島雪乃先生のこの一冊

『ペコロスの母に会いに行く』
岡野雄一 著 西日本新聞社 1,200円+税
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 柔らかいタッチの絵と優しい語り口で綴られるコミックエッセイです。本屋やテレビのCMなどで、目にした方も少なくないのではないでしょうか。
 老人ホームにいる認知症の母とその母に会いにいく息子の日常を、面白おかしくそしてちょっぴり切なく描かれています。
 私たちは仕事をしていく中で、認知症の方と接しています。考えてみると「やっかいだなぁ」「困ったなぁ」と思う人が多くいませんか。昔のことばかり何度も話す、急に怒り出す、あったことをすぐに忘れてしまう。そんな症状を「やっかい」だと切り捨てるのではなく、笑いを含めて 温かに見守ることの大切さを感じました。
 作中で作者の母は、亡くなった夫や過去の情景を、夢の中や現実の生活の一部として繰り返し見ています。実は私も、勤務中に似たようなことがありました。「うちでお父さんとお母さんが待ってるから早く帰ってご飯作ってあげなくちゃいけないの」と自宅に帰りたがる方。
 きっとこの人の中では生きているのです。生き生きと生活し、そして娘の帰りを待っていてくれているのです。
 このエッセイを通して、認知症の方の現実と過去の混ざり合った世界を垣間見ると、切なくも思うかもしれません。
 “認知症になるのも、悪くないのかも”と。
posted by st_yamanashi at 22:24| Comment(0) | 書籍(その他) | 更新情報をチェックする

2015年09月01日

『こころの旅』 巨摩共立病院 米長裕恵先生のこの一冊

『こころの旅』
神谷美恵子著 みすず書房 1,600円+税
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 私が悩んだり、迷ったりした時に、心のよりどころにして、いつも手にとる本があります。私の人生の指南書である『こころの旅』を紹介させていただきます。
 本書には、人のこころの旅路(胎児期~老年期)が丁寧に綴られています。学生時代のテキストの1冊でしたが、若い頃は「青年期とは苦しい模索の季節である」という言葉に何度も救われました。そして、最近は”老いの自覚”をひそかに感じて、本書を手にとりました。
 原稿は1973年から書かれ、当時と時代背景は変わっていますが、人間の本質・こころの旅路は、今も昔も変わらないことがわかります。「からだにとって空気や水や食物が必要なのと同様に、こころには生きるよろこびが必要であることは一生変わらない」と書かれています。各年代には、それぞれの課題と危機があり、それを上手く乗り越えられたときには、生きて行く上で大切な力が身にそなわるといいますが、そのヒントが書かれていると思います。
 自分自身のために、そしてSTとして臨床場面で接する病をかかえている人、子どもや老いた人のこころのあり方を理解するために、本書が役立つと思います。
 自分の興味・関心がある記述の部分から、読み進めることをお薦めいたします。
posted by st_yamanashi at 13:14| Comment(0) | 書籍(その他) | 更新情報をチェックする